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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第800回

連載800回記念! 10~20年前に撮った懐かしいカメラと猫写真を振り返る

2023年01月25日 12時00分更新

文● 荻窪 圭/猫写真家 編集●ASCII

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連載第2回で登場した、見事な4連猫。真ん中の2匹と両端の2匹がそれぞれ兄弟なのだった。2006年1月 コダック EasyShare V570

 気がついたら、連載「這いつくばって猫に近づけ」も、無事に第800回を迎えることができました。みなさま、ありがとうございます。自分で言うのもなんだけど、800回ってすごいな。普通、800回も続けば単行本の話とか、個展の話とかありそうだけど、そういうのは一切なく、淡々と800回ってのも悪くない。

 初回は、なんと2007年5月。約16年前。そもそも「這いつくばって猫に近づけ」という名前も、第1回の副題として付けたもの。猫撮影の連載をするに当たり、最初は猫と同じ目の高さで、そっと近づいて撮るところから始めたいよな、から思いついたのだ。

 そのテーマに合った写真を、ってことで掲載したのがこれ。第1回で使った写真をレタッチし直したものだ。撮影は2003年(なんと20年前)。カメラはオリンパスのC-5050ZOOM。当時のハイエンドコンデジだ。懐かしすぎますな。

連載第1回で使った這いつくばり写真。とはいえ、C-5050Zはチルト式モニタを持っていたので、本人は這いつくばってないのだった。見事なグレー猫。2003年7月 オリンパス CAMEDIA C-5050ZOOM

 今回は800回記念ってことで、初期……つまり10年以上前に撮った街猫の写真から振り返ってみようかと思う。700回記念のときも似たようなことをした記憶があるんだけど、そこは気にしないでください。あのときとは写真がかぶらないようにするから。

 冒頭写真は、2006年1月撮影で連載の第2回で紹介したもの。カメラはコダックのEasyShare V570。このカメラ、スマホよりずっと早く「デュアルカメラ」を搭載した製品で、デュアルのうちの一方は、当時は珍しかった超広角カメラ。名機だったなあ、ということで、4匹の猫が横に並んだ写真を。

 実はこのとき、最初は両端の2匹しかいなかったのだ。カメラを向けてたら3匹目がやってきて、4匹目がやってきて、いつのまにかきれいに並んでくれたのである。ちなみに真ん中の2匹が兄弟、両端の2匹も兄弟。

 次の写真も、冒頭写真と同じ公園(広い公園なので場所はちょっと違う)。2006年12月の撮影で、連載第6回に登場。見事な“3段舐め”がお気に入りだ。いちばん上で舐めてる猫は、冒頭写真で右から2番目にいる猫だ。名前は「にーに」。このときのカメラは、キヤノンのPowerShot G7。懐かしいハイエンドコンデジのシリーズだ。

いつも夕方近くなるとボランティアのおばさまがやってきて猫も集まり、ときどきこんな光景が見られたのだ。2006年12月 キヤノン PowerShot G7

 実はこの公園、いちばん多いときで10匹以上の猫がおり、みな、人懐っこいのだった。

 次の写真は、自転車で走ってるとき、たまたま見かけた人懐っこいハチワレ。2007年の7月撮影で、モニタが回転する縦型デザインのユニークなコンデジ、キヤノンのPowerShot TX1が登場したので、それを利用してローアングルで撮ってみた。第11回で使った写真である。

連載第11回で使用。珍しい縦型のコンパクトデジカメで、動画機能にも力を入れていた。バリアングルモニタを利用してローアングル撮影。2007年7月 キヤノン PowerShot TX1

 この連載、当初はコンパクトデジカメ中心だったが、徐々にデジタル一眼レフで撮った写真が多くなる。この辺は、デジカメ市場の変化と連動してると思ってもらっていい。

 次の写真は、当時愛用していたニコンのデジタル一眼レフ、D90で撮った写真。連載第73回だ。川の護岸にいたハチワレ。よく見ると、大きな排水口の中から黒猫も顔をのぞかせている。

連載第73回で使用。恰幅のいいハチワレに引かれてレンズを向けたら、排水口から黒猫もちょっとのぞいてたのだった。2008年10月 ニコン D90

 この川も、かつては至るところで猫に出会ったものだが、ここ10年くらいはすっかり見なくなった。

 もう一つ、D90で撮った街猫写真。ワイルドな顔で鳴いているけれども、注目はその左上でぶらぶらしている注意書き。パウチまでしてあるしっかりとした作りで、読んでみると「猫に近づかないようにお願いします/この猫は人になついていません。突然近づいたり、手を出したりすると驚いて爪を出すことがありますので、お気をつけください……」。

 とある小さな美術館のエントランスなのだけど、飼ってるわけでもなく、迷惑がってるわけでもなく、ただそこに住みついたのを黙認して世話しているという感じか。

連載第120回で登場した注意書き付きの猫。危険そうに見えるのは、ちょうど鳴いた瞬間を撮ったから。2009年9月 ニコン D90

 中には「ん?」となる写真もある。これである。第124回の写真。撮影は2009年。なんてことない自転車の間で猫がくつろいでる写真なんだが……、よく見ると2台とも自転車のサドルがない! 盗られてしまったのか、何らかの理由で外してるのかわからないけど、気になるよね。カメラはソニーのα550。

連載第124回で、猫よりもサドルなし自転車に注目? 2009年10月 ソニー α550

 さて、ここまでの7枚、どれも東京23区、あるいは多摩東部の街中や公園で出会った猫なんだけど、今回連載で使った写真を見直してたら、一つ気づいたことがある。耳である。耳がカットされてる猫がほとんどいないのだ。

 今、都市部で出会う猫のほとんどが、耳の先がV字にカットされている。これは去勢したという印で、「さくらねこ」と呼ばれている。猫が増えすぎないよう、捕獲して去勢してリリースするという活動が広がっているからだ。

 実は、先ほど掲載した3匹が重なって舐めてる写真の猫たちも去勢されてる。真ん中の猫をよく見ると、耳にオレンジ色のピアスをしてるのがわかるはずだが、これは去勢手術済みですという証なのだ。ただ、ピアスには取れやすいという欠点があり(実際、ほかの2匹のは取れてしまっている)、耳のV字カットが定着したようである。

 個人的な感触で、エビデンスはないのだけど、東京で出会う外猫のさくらねこ率は、ここ10年くらいでどんどん上がっていて、今、少なくとも東京で出会う猫は耳がカットされているほうが多い。連載を見直してみると、2010年以前にもそれとおぼしき猫はいたけど、はっきりわかるのは2010年5月に撮った、この猫だった。

連載154回で登場した「さくらねこ」。耳がV字にカットされてるのがわかる。人懐っこく、目の前でごろんとして撫でさせてくれた。2010年5月 ソニー Cyber-shot DSC-HX5V

 連載を始めたころは、そんなことまで考えなかったけど、長年続けることで、猫たちを取り巻く環境の変化もこうして残せるのだなあと思ったしだいである。

 801回目以降も、よろしくお願いします。

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筆者紹介─荻窪 圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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